2025.11.15
101号:会いたい!湯島本郷まちの人
前編に続き「東京科学大学の使命」は、何か? 田中学長にお聞きしました。
東京科学大学の理念は「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」です。もっと、シンプルに表現すると、『医療と科学技術を融合させて人類と社会に貢献する』ということでしょうか。統合してただ規模が大きくなるのではなく、医療と工学を核に据え、社会に役立つ大学を目指しています。
私たちの使命は二つです。
ひとつは、高度な専門性と広い視野を持つ人材を育てること。もうひとつは、国際的に誇れる研究成果を生み出すことです。
特に、日本発の医工連携モデルを確立して、世界の大学の中でも存在感を出していきたいと思っています。
「国際卓越研究大学」の認定を受けて世界トップレベルに入っていくことです。 医療とテクノロジーを組み合わせて、がんや難病の新しい治療法、災害医療や感染症対策など、社会の安心につながる研究を進めたいですね。
統合したばかりで課題は山積みです。 まずは、学生たちの意識融合をしていきたいです。医学を志してきたものは人のためになりたいと考えてきて、工学を志してきたものは、何か新しいものを作りたい、発見したいと考えており全く違うのです。この意識が融合したら素晴らしいと思うのです。
そして、東工大と医科歯科の文化や歴史を融合させ、学生も職員もみんなが『ここで学んでよかった』と心から思える大学にしたい。
さらに、この分野なら東京科学大学が〝世界一〞と胸を張れるものを必ず作りたいですね。
私は医師を目指して臨床医学を学びました。きっかけは父の存在です。父は体に自信があって、糖尿病でも無茶をしていたんですが、だんだん症状が進んで、やりたい仕事ができなくなっていくのを目の当たりにしました。それで、医師として父を助けたい、父のような方を支えたいという思いから医学の道に進みました。
よく受験生にも話すのですが、医師という職業は、志し始めるとネガティブなことはあまり考えられなくなり、やめるという選択肢が自然と浮かばないです。

使命は 高度な専門性と広い視野を持つ人材を育てる事

Uエリア内の「MDショップ」

東京科学大学 湯島キャンパス
以前は音楽が好きでバイオリンをやっていましたが、今はなかなか時間がないので、気分転換に「読書」と「散歩」です。
本を読むと新しい視点が得られます、散歩すると頭が整理されます。湯島本郷を歩くと四季の移ろいが感じられます。
ここは、学生が多くて、街に活気があります。緑も多くて、湯島聖堂や湯島天神、神田明神といった歴史ある場所がすぐそばにある。病院や研究機関も集まっていて、学問と実践がすぐ隣にある街です。東京科学大学にとって、本当に理想的な環境だと思います。
御茶ノ水駅から本郷方面に行く人たちが、自然に大学の敷地を通り抜けています。
私自身も学生のころから使っていました。最近は地下鉄とも直結し、さらに便利になりました。
新しい建物をつくるとき、私が条件にしたのは二つ。免震構造で災害に強いこと、そして誰もが気軽に集まれる大きなロビーをつくることです。ロビーは朝から夜遅くまで開放され、スターバックスやベーカリーがあり、学生だけでなく地域の方も訪れます。実は本学にあるスタバは周辺でもトップクラスの売上を誇り、 セブンイレブンも界隈で一番だそうです。 病院に直接入るのは身構えてしまうけれど、ロビーを通れば自然に足を運べる。「ワンプッシュの安心感」を大切にしながら、大学と病院の敷居を低くして、街と共に息づく大学でありたいと思っています。
インタビューをさせて頂き、田中学長の現場感覚と、医療と科学技術を融合して社会に貢献しようという強い思いが伝わってきました。東京科学大学がこれからどう成長していくのか、とてもとても楽しみです。