コラム alt

2024.03.17

「彼岸と此岸」

91号:紗都ちゃんの寺小屋ばなし8

講安寺住職、両門町会町会長 池田紗都さん

 令和6年の春のお彼岸はこのマーチング通信発行日であります3月17日から23日の一週間です。さあ、ご先祖を思い出しましたか?お墓参りに行きますか?
 「暑さ寒さも彼岸まで」と言う通り、日中の気温が温かく感じられるようになったこの季節、春のお彼岸を迎えます。春も秋も、春分の日/秋分の日を真ん中とする一週間を指しますが、そもそも彼岸とは「彼の岸」と書くように、 私達の住む世界を「此の岸」とし相対する世界のこと、つまり仏教では極楽浄土です。『観無量寿経』には「日想観」 といって、真西に沈む夕陽を見つめ、その先にある極楽浄土に想いを馳せ、先祖を思い手を合わせましょうという仏道修行が説かれています。一年を通して春分の日/秋分の日は真西に日が落ちることから、西の彼方にあると説かれる浄土を見つめ普段より一層修行に適しているということです。お寺では彼岸法要を勤め、先祖への感謝をお伝えしています。
 しかし私たちは欲が尽きない人間、「彼岸が来れば団子を思う」「彼岸の団子で気がそれた」なんていうことわざもあります。彼岸に先祖のことを思うより、それにつきものである団子の方を考えてしまう、つまり彼岸の本義を忘れて、楽なことばかり考えてしまうというドキリとする意味です。春分の日は祝日なのでどこに出かけよう、と考えてしまうかもしれませんが、一年にたった二回、彼岸にはご先祖や旅立たれたあの人の為に手を合わせてみませんか。彼岸の一週間はいつお墓参りに行っても良いのです。
 私はお寺で檀家様に法話をする際よくお伝えしていることがあります。「私達は今を生きることで精一杯です、皆さん一生懸命生きておられます。毎日ご先祖の為に供養することはなかなか難しいですね。ですので皆様の代わりにお坊さんは毎日お経をあげていますのでご安心下さい。ただ、ご先祖が一番喜ばれますのはご家族からのお気持ちですから、御命日や彼岸やお盆には彼の岸を向いてあげて下さい。あちらは常にこちらを見守っているのですから。」 さあ、ご先祖を思い出しましたか?お参りに行きましょう。

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