コラム alt

2025.11.15

「ふりかけとポルシェと諸法無我」

101号:紗都ちゃんの寺小屋ばなし18

講安寺住職、両門町会町会長 池田紗都さん

「グラム単位で考えると ポルシェよりふりかけの方が高い」。
この言葉は現代歌人である天野慶さんが、〝教師に言われた衝撃的な言葉〞というタグでの投稿を引用したものです。私もこの言葉に衝撃を受け考えさせられました。

物の価値とは一体何なのでしょうか。ポルシェは移動の手段ですし、ふりかけはご飯のお供。それぞれにはそれぞれの価値があります。しかし私たちは往々にしてその価値をお金ではかります。古ぼけた小道具も、金銭的価値が高いと言われればありがたく感じますし、落書きのような絵もオークションで高値がつけば見直します。そのようにお金に振り回されてしまう私たちですが、それでも価値を求めてしまうのは私たちの迷いなのでしょう。

お釈迦様の教えに「諸法無我」という言葉があります。 諸法無我とは、あらゆるものは相互に関係し合っていて、 因縁によって成り立っているわけであり、またその実態は固定されたものではなく常に変化していることから、変化しない固定された「我」や「自分」は存在しないという仏教の考え方です。これにより、自分という一人の人間も多くの縁が組み合わさって成り立っているので、「我」への執着から解放され、あらゆる存在に感謝する心を持つということになります。お釈迦さまの眼からみれば、すべてが等しく光り輝いていて、それぞれに価値を決め分類すること自体が大きな間違いだということなのでしょう。ですから、ポルシェもふりかけも、それぞれの光を見ていくことがさとりの眼差しなのです。

そうはいってもというところが、私たち人間の煩悩たる所以でしょうか。ポルシェを見れば羨ましいと思う心が煩悩と言うのであればそれを取り除くことはなかなか難しいですが、羨ましいのその直後に、ポルシェよりふりかけの方が高い、物の価値は執着心からくるものだと考えてみることも面白いかもしれません。

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