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2026.01.17

「駿馬」

102号:紗都ちゃんの寺小屋ばなし19

講安寺住職、両門町会町会長 池田紗都さん

今年の干支は「馬」ですね。 古来、日本で馬は、農耕はもとより人を運ぶ乗り物としてとても大切にされてきました。 山が多く、常に坂を越えなければほかの地域と交易できない日本では、馬は交通及び運輸に欠かせない存在であり、日本を支えてきた動物といえます。 お釈迦さまの前世における物語『ジャータカ物語』にも馬が登場します。 短いコラムですので簡単にご紹介します。

昔、とある王宮で飼われていた馬は、一日千里を走るといわれるほどの駿馬で、王はこの馬を大変可愛がっていました。 その頃、周囲の国々では戦争が絶えず、周囲7国が王宮めがけて国を渡せと申し出てきたのです。 王は一人の優秀な騎士に相談すると、その騎士は王の駿馬に乗らせてくれれば必ず7国を討つというので駿馬を差し出しました。 瞬く間に6国を打ち破った時、駿馬が傷を負います。 横たわった駿馬は、他の馬では負けてしまうと騎士に伝え、傷を負いながらもついに7国目を打ち破り、7国全ての王を生け捕りにし王の前に差し出しこう伝えたのです。 「王さま、どうか私の願いをお聞きください。あの7人の王を殺さないでください。二度と戦いをしないと誓わせ釈放し、この栄誉はすべて騎士にお与えください。そしてこれからも貧しい人々に見せしめをなさり正義と平等による政治をなさいますように。」 駿馬はそれだけを言い残し息絶えました。 王は駿馬の首を抱きかかえ、はらはらと涙を流しました。 以後、国は王の善政によってますます栄えたのでした。

この話は、お釈迦さまが修行中に努力を捨てた修行僧に語られたものです。 駿馬はお釈迦さま、騎士と王はそれぞれ十大弟子の舎利弗尊者、阿難尊者の前世のお姿です。 騎士と共に命を懸けて戦った駿馬は、王に7人の国王の命乞いまでして、布施と正義と平等を説き、努力と利他の大切さを教えています。 優しい目と力強い肉体を持つ馬。 大切なことを忘れそうになったらこの駿馬の話を思い出してみてください。

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