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2023.05.21

湯島天満宮 権宮司 押見 昌純さん

86号:湯島天満宮 「宮神輿」のお話し

新しい宮神輿を作ったいきさつや見どころについて、湯島天満宮の権宮司・押見昌純さんにお話を伺いました。

氏子たちの心をひとつにまとめ
新しくお披露目された宮神輿が
後世に残る歴史の一歩を踏み出します

湯島天満宮の例大祭とは

 湯島天満宮の例大祭とは湯島天満宮では、菅原道真公と天之手力雄命(あめのたぢからおのみこと)の二柱の神様をお祀りしており、 毎年5月25日に湯島天満宮例大祭を斎行いたします。これは一年で一番大切な神事。この日を迎えられたことを神様に感謝し、国の隆昌と皇室の弥栄、 地域の安寧を祈ります。ここ数年はお祭りの本質である祭典は毎年行っていたのですが、それに付随する御神輿等の行事は、感染拡大防止のため見送っておりました。
 神輿は神様の神聖な乗り物です。御霊をお遷しした神輿が氏子町会を練り歩くことで、地域内の災厄や穢れを祓い清めると言われています。各氏子町会もそれぞれ「町神輿を持っていますが、神社が所有する神輿は「宮神輿」 と呼ばれ、別格となります。

湯島を象徴する後世まで残る宮神輿

 新しい本宮神輿(宮神輿)は、御大典(即位の礼)を記念して作りました。 「湯島の新しい象徴として地域のみなさんに親しまれ、後世まで残る宮神輿を作りたい」という宮司の熱い思いが込められ、細部までこだわりぬいた精緻な御神輿です。 以前の宮神輿(本社御輿)は、明治時代に作られたので、長い間、湯島の街の変遷を見守り、氏子の皆様に大変親しまれてきましたが、この度湯島天満宮信濃分社にお移し、今後は長野の皆様にも親しんで頂ければと思います。
 新しい宮神輿は、これからの湯島の象徴となるような、大変立派なものです。土台となる台輪は4尺(約120 ㎝)、担ぎ棒を含めると重さは約1tにも及びます。とは言え、いくら言葉を尽くして説明しても、大きさや素晴らしさを想像するのは難しいことでしょう。

細部までこだわりぬいた宮神輿

屋根に鎮座するきらびやかな鳳凰

屋根は本殿と同じ唐破風様式

一級の職人技が施された工芸品

 制作にあたり様々な工夫が必要でした。普通サイズのお神輿を単純に大きくすれば良いと言う事ではなく、 十全十美の美しい仕上がりにするため、まず図面をもとに原寸大の模型を作り、実際の大きさを見ながら全体のバランスを考え、細部までこだわり抜いた匠の技で作られて行きました。
 屋根は、本殿と同じ唐破風(からはふ)様式。格式が高い日本建築に用いられ、弓のような優美な曲線が特徴です。その屋根の頂きには、神輿の象徴の一つであるきらびやかな鳳凰が鎮座しています。威風堂々と羽を広げ、その重さだけで約45㎏もある巨大なものです。 四方に施された四神や龍などの彫刻はイキイキとした躍動感にあふれ、豪華絢爛な金細工、神紋である加賀梅鉢を象った七宝焼き、漆黒の艶を放つ美しい漆塗りなど、随所に日本の伝統工芸の技術を注ぎ込み、長い時間をかけてようやく完成したものです。
 伝統技術と言うのはいくら技術を学んだところで、実際に作らなくては継承される事はなく、御神輿を造る職人も御神輿を作らない事には、その技は成熟せず、伝承もされません。皆様も小物でも良いので工芸品をひとつでも所有することで、職人の生活を支え匠の技も後世へ受け継がれていく事が出来ると思います。

氏子と一体になることで神輿は更に華やぐ

 心の拠り所となる信仰や、伝統文化の継承としての祭りの意義は、氏子とのつながりを抜きにしては語れません。 第一級の職人技術を注ぎ込んだ宮神輿はそれだけでも端正な美しさを見せてくれますが、担ぎ手である氏子の「想い」と一体になることで更に華やぎを増すものです。
 全国的に祭事を担う地域住民の減少が課題となっていますが、湯島には世代を超えた良い人間関係が残っています。氏子の気持ちがひとつにならないと神輿は上がりません。都心にも関わらず湯島の街には血の通う人情味が残っているのは、「神社」が地域コミュニティの核となり、祭りが心をひとつにしコミュニティの絆をより強くしているのかもしれませんね。
 本宮神輿と担ぎ手たちの熱い想いが一体となって、歴史に残る一日となると思いますので週末のお祭りをぜひご覧ください。

湯島天満宮
東京都文京区湯島3-30-1
TEL. 03-3836-0753

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