まちの人 alt

2025.09.20

東京科学大学 学長 田中 雄二郎さん

100号:会いたい!湯島本郷まちの人

「社会に還元する世界最高水準の科学大学を目指したい」 その想いを田中学長にお伺いしました。

田中学長に聞く

東京科学大学誕生までの道のり(前編)

 学長のプロフィールを教えてください。

生まれは愛知県豊橋市ですが、育ちは東京の大田区です。中学・高校は麻布学園に通っていました。実は麻布の創立者・江原素六さんは、この湯島本郷で学んだ方なんですよ。だから意外と昔からこの土地とのご縁はあったんです。
小6のとき、お茶の水の進学塾に通っていて、中央線から東京医科歯科大学を見たのが一番古い記憶です。その後、 麻布を卒業して駿台予備校(お茶の水) を経て東京医科歯科大学に入りました。 専門は消化器の中でも肝臓で、外来や研究にずっと関わってきました。
これまで病院長や医学科教育委員長、 医療担当理事などを務めましたが、学長になる直前まで外来診療も続けていました。現場から離れないことを大事にしてきたんです。湯島本郷とは、もう45年の付き合いになります。

東京工業大学との統合のきっかけは何ですか。

コロナ禍がきっかけでした。うちの大学は都内で一番多く重症患者さんを受け入れましたが、ワクチンや新薬の開発となると自力では難しい。「医療だけでは社会課題を解決するのに限界がある。 テクノロジーと組まないと」と強く感じました。
もともと東京工業大学とは2000 年から4大学連合でのつながりがありました。2021年 10 月に東工大の益学長を訪ねて統合の話を切り出したんです。最初は慎重な反応でしたが、その後、若手の先生たちの合宿や勉強会を重ねて理解を深めました。
翌年の夏、益学長から「一法人一大学」という案が出て、一気に加速。オンライン含めて60回以上話し合い、2022年10月14日に統合合意を発表。そして2024年10月1日、東京科学大学が誕生しました。

東京科学大学の特徴や強みは何でしょうか。

一番の特徴は、医学部と工学部を持つ大学が新たに統合したところです。世界的にもこういう大学はそうは多くないです。例えば、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンや台湾の国立陽明交通大学が挙げられます。インペリアル・カレッジ・ロンドンは医工連携で飛躍して、 今や世界ランキング2位です。
東京科学大学は、まさに医療系と工学系が「一緒にやるために」統合した大学です。東工大は150年、医科歯科は90年余りの歴史があり、ブラウン管の発明や歯科接着技術の開発など、世界を変える発見もしてきました。こうした実績は大きな強みです。
工学の学生は「世界一を目指す」自由な発想を持ち、医学の学生は「人のために役立ちたい」と考える。視点は違いますが、交流することでお互いの視野が広がり、世界一を目指しながら人のためになる研究や活動が可能になります。
この融合こそ、東京科学大学の最大の強みです。

学長の仕事内容について教えてください。

学長は大学全体の舵取り役です。教育、 研究、病院、財務、国際戦略︙全てに関わります。東京科学大学はできたばかりなので、まずは学内の一体感をつくること、将来構想を実現することに力を入れています。

仕事をする上で大事にしていることは何ですか。

「現場を知ること」と「学生の声を聴くこと」です。医師としてやってきた経験から、現場感覚を持った判断が大切です。 教育は未来への投資ですから、学生が自由に交流して新しい発想を生み出せる環境づくりを重視しています。

(後編は次号101号に掲載予定です。)

東京科学大学 湯島キャンパス

益学長×田中学長

東京科学大学湯島キャンパス
03-5803-5009
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